片山容一さんは脳神経外科医で、日本大学の教授でもあります。
福島県の出身で、県内の高校を卒業した後、日本大学医学部に進学しました。
そして同大学の大学院医学研究科博士課程を修了し、医学博士号を取得したあと、日本脳神経外科学会専門医になりました。
その後バージニア医科大学で研修し、講師や助教授も務め、カリフォルニア大学ロサンゼルス校脳損傷研究所長も経て、日本大学の医学部長になった医師です。
そして30年以上、脳機能障害による後遺症を克服すべく、脳機能再建のための手術開発に取り組んできました。
1979年に、脳深部刺激療法と言って脳内の働きを調整する手術法が日本に初めて導入されたのですが、その脳深部刺激療法についての研究や開発に携わり、日本一の手術の件数と最高の治療レベルを誇っています。
それは脳の特定の部分に電極を埋め込んで、弱い電気刺激を持続して送り、異常のある神経細胞を刺激することで、修正を図る定位脳手術という手術法です。
電極は1mmで柔らかくて、脳になじむようにできています。
刺激をする電気の発生装置はパースメーカーのような感じで、胸部に埋め込みます。
手術は開頭せずに、神経ナビゲーションシステムなどの高度な技術を用いて行います。
それで刺激する場所を正確にとらえて、目的の部位の周辺の神経細胞の活動を記録しながら、その目的の場所が機能的にも合っているかを確かめながら、手術を進めていくのです。
その手術は実に高い技術が必要となるので、どこの病院でもできるものではありませんが、片山容一医師は日本大学附属病院の板橋病院でそれを実施してきました。
脳深部刺激療法は不随意運動や、神経によって起こる痛みを緩和することが目的です。
病気そのものが治るわけではありませんが、不随意運動が起きて手足が震え、歩いたりできないパーキンソン病の人などに脳深部刺激療法を行うと、その症状が緩和されて自由に動くことができるようになるので、生活がずいぶん楽になります。
また筋肉が異常に収縮して、体がねじれてしまうジストニアという病気があるのですが、その患者さんにも脳深部刺激療法を行ったところ不随意運動が驚くほど改善されたという実例もあります。
脳卒中による麻痺や震えなどの後遺症にも効果的で、麻痺が軽減されるということを発見し、論文を発表したこともあります。
パーキンソン病などの患者さんが全国から来られますが、遠方からの移動は大変です。
そのためにこの手術法に興味がある医師に全国から来てもらって、研修を積んで、地元に帰って各地で治療を行えるようにしていて、今では全国30以上の大学病院とネットワークが広がっています。
日本初の覚醒の下での手術も板橋病院で行いました。
脳の腫瘍が脳の言語野の近くにある場合は、言語野を損傷して言語の面で後遺症が残らないように、患者さんと会話をしながら行うというものです。
手術の途中で言語の面で変化が出てきたら、切除はそこまでにするという方法をとっていたのですが、一度「言語の障害が出てもいいから完全に切除をしてほしい」という患者さんの願いを聞いて、最後まで切除をしたところ、言語が全く話せなくなったのですが、徐々に隣の細胞が代わりの役目をしてきて半年後には話せるようになったという実例を見てから、最大限に腫瘍を切除する方法をとっています。
片山容一医師は、スタッフのチームワークが良いと、スタッフの表情も明るくなり、それが患者さんを大切にするということにつながるということをモットーに日々治療を続けています。