硬膜下血腫とは、頭部の外傷による疾患で急性と慢性があります。頭部への外傷後に血液と脳脊髄液が頭蓋骨の内側にある硬膜とくも膜の間に溜まることで皮膜が形成され、この膜から出血が繰り返されることで血腫が徐々に大きくなり症状が出てきます。
急性タイプは、外傷を受けた直後または2、3日以内に症状が出る血腫です。くも膜下出血に症状が似ていると言われます。急性タイプは、転落や殴打、交通事故などが原因で発生することが多く発症する年齢層も幅広いです。また、小児の場合は、虐待による頭部への外傷を受けたときも多く見られます。若年者では、スポーツ中の頭部への外傷の際にも見られます。
慢性タイプは外傷から数週から数ヶ月後に頭の中で出血が起きます。硬膜の内側に出血がじわじわと起きることで血腫が出来た状態です。血腫による圧迫が脳ヘルニアの状態まで進行すると死に至る場合があります。頭部への外傷直後は症状がない場合が多いため、病院を受診したり検査を受けていない人がほとんどです。出血が緩やかなため原因の特定が難しく特に高齢者が多いと言われています。他にも、中高年者や男性、お酒の好きな人に多い傾向があります。高齢者の場合は、机のかどや鴨居に頭をぶつけた程度の軽いけが原因になることがあり頭部への外傷直後は症状がない場合が多いです。
診断は、CT検査で行われます。頭部への外傷直後は、CTでも異常が見つからないことがあります。症状が現れれば、血腫により判別が可能になります。
硬膜下血腫の症状は、急性タイプは、強い外傷が原因で起きる場合が多いため、外傷直後から意識がないことがあります。一度意識障害があらわれると急激に悪化すると言われています。慢性の場合は発症はゆるやかなため、身体面でも精神面でも変化に気づきにくく症状の進行もきづきにくいことがあります。身体に出る症状としては、吐き気や嘔吐、歩行障害、頭痛です。進行していくと意識障害を引き起こす場合が有り、放置すると重症化されます。精神に出る症状には、認知症、集中力の低下。記憶障害などの症状が現れます。
血腫が大きく症状が重い場合は、局所麻酔で手術を行います。局所麻酔で行えるため高齢者や体力があまりない人でも安全な脳外科手術と言われています。手術は、局所麻酔をかけ頭蓋骨に孔を開けます。ここから血腫を洗浄し除去する方法です。生理食塩水を入れて洗い流す穿頭洗浄術手術や血腫の中に管を入れることで自然に排出させる穿頭血腫ドレナージ術があります。また、血腫が小さく症状が軽い場合は、手術が必要がないこともあります。その場合は、自然に吸収されることを期待して経過観察をおこないます。
手術が早期に行われた場合は、症状が劇的に改善されるためリハビリテーションが必要ないとも言われています。ただし、手術後に感染や出血などの合併症が起きる場合があり、血腫の再発率は10%とされており再手術が必要になることがあります。