三叉神経痛とは、脳神経の一つである三叉神経が何らかの刺激を受けることによって主に顔面に激しい痛みが生じる病気のことで、男性よりも女性のほうが多いといわれています。

三叉神経は、目の上と眼窩、前頭部、鼻腔などを通る眼神経(がんしんけい)、目の下や頬、上唇、上顎などを通る上顎神経(じょうがくしんけい)、頬や下唇、頬、舌の一部などを通る下顎神経(かがくしんけい)の3つの神経に枝分かれています。
これらの神経には、痛みや熱さなどの知覚を司る神経線維が集まっているので、これらの神経に強い刺激が加わると、激しい痛みが生じると考えられています。

三叉神経痛には、患者一人ひとりに痛みを誘発させる原因となる特定の部分(誘発帯)があり、あくびやくしゃみなどの生理現象による刺激、食事や洗顔、冷たい水などの日常生活の刺激、血管による三叉神経の圧迫などによって誘発帯が刺激されると、その刺激が三叉神経から脳に伝わって激しい痛みとしてあらわれます。
また、帯状疱疹が顔にできた場合には、治癒した後でもその後遺症で、長い間三叉神経の痛みに悩まされることもあります。

三叉神経痛の症状は、突発的に起こる激しい痛みが数秒から数分間持続し、しばらく時間をおいて何度も繰り返すというパターンが多く、こうした症状は数時間に及びます。
その痛みは、「刺すような痛み」、「焼けるような痛み」、「えぐられるような痛み」などと様々に表現されますが、実際には言葉では言い尽くせない激しい痛みのようです。
症状が続く期間は個人差が大きく、数日程度で収束する場合もあれば、数カ月経過しても症状が続く場合もあります。

一方、三叉神経痛の治療法はいくつかありますが、最初に薬物療法を行なって改善が見られない場合に、神経ブロック療法、定位放射線療法(ガンマナイフなど)」、外科手術などから、患者それぞれに適した治療法が選択されます。

薬物療法は、神経痛の治療にも用いられるカルバマゼピン(商品名:テグレトール)という抗てんかん薬が利用するのが一般的です。
この薬には、めまいや湿疹などの副作用があるので、副作用が強くあらわれて治療継続が困難な場合には、他の治療法が検討されます。

神経ブロック療法は、神経やその周辺組織に麻酔薬やアルコールなどを注射することによって痛みの緩和を目指す治療法で、治療は主に麻酔科医が担当します。
神経ブロック療法は比較的安全な治療法ですが、血液疾患や糖尿病、高血圧、肝臓病などの持病がある場合には、安全のために事前に医師に申告する必要があります。

定位放射線療法は、放射線を様々な方向から患部にピンポイントで照射することによって、放射線による細胞へのダメージを最小限にしながら病巣を取り除く治療法です。
脳腫瘍の治療によく用いられている治療法ですが、近年、三叉神経に照射すれば痛みを緩和できることがわかり、治療法として用いられるようになりました。
ただし、放射線による被曝のリスクがある上、保険が適用されない治療法(2013年時点)であるため治療費は自己負担となります。

外科手術は、三叉神経を圧迫している原因を手術で取り除く治療法です。
たとえば、血管によって神経が圧迫されている場合には、血管と三叉神経の間にスポンジを詰めて神経の圧迫を改善します。
また、腫瘍によって神経が圧迫されている場合には、手術によって腫瘍を除去します。

なお、上記の治療法の他にも、歯の噛みあわせが悪かったり、動脈硬化などによって血管が膨張したりしていると、三叉神経を刺激しやすくなるので、内科や歯科で治療が必要となる場合もあります。