慢性硬膜下血腫は主に高齢者に多く発症して、硬膜の内側に血腫が緩除に形成される疾患です。女性よりも男性に多く見られる傾向があります。多くは数ヶ月前に頭をぶつけたり、比較的軽度な頭部外傷が原因のことが多いですが、原因がわからない症例も多く見られます。水頭症と言われる病気の治療でドレナージを行った際の減圧のリスクになると言われています。
一般的には軽微な頭部外傷後の慢性期(3週間以降)に頭痛、片麻痺(歩行障害)、精神症状(認知症)が発症します。年間に発症する人数は5~10万人に1人の割合で頭部外傷で硬膜を繋ぐ橋静脈の破綻などにより硬膜の内側に脳表の髄液などと混ざった血性貯留液が徐々に被膜を形成しつつ血腫として成長するのが原因とされています。好発部位は前頭、側頭、頭頂部で、右か左の片方だけの一側性が多いと言われています。ごくまれに1割の確率で両側性に見られることがあります。
慢性硬膜下血腫の原因が頭部外傷でない場合は酔っ払っていたり、少し呆けていたりしていて外傷があったかどうかわからない場合が多くて3割存在します。例えば、大酒飲みの方、脳に萎縮がある方、出血傾向のある脳梗塞予防の薬(抗凝固剤)を飲んでいる場合や水頭症に対する短絡術という手術後、透析、癌が硬膜に転移している場合等があげられます。
もしも外傷を受けた場合は、数週間は無症状期が続きます。その後、失語症や呆けや意欲の低下、身体の麻痺など局所神経症状の傾向が見られた場合は直ぐにお医者さんに行って検査を受けたほうが賢明でしょう。
高齢者の場合は頭蓋内圧尤進症状は少なく、痴呆等の精神症状や失禁、片麻痺等が主に見られる症状です。比較的に効果急に呆けの症状が見られた場合は慢性硬膜下血腫を疑うことも重要です。この症状は痴呆症の中でも治療可能なものとして認識されています。
急性で起こる場合もあり、急激な意識障害や片麻痺で発症、生命に危機を及ぼす症状が見られる場合があり、その場合は重症な脳卒中の症状と似たような状態になります。
診断にはCTスキャンやMRIによって断面図を取って症状を見るほうがいいでしょう。現在の治療法には外科手術が主に使用されています。以前は全身麻酔下に大開頭・被膜摘出術が行われていますが、現在は石灰化した場合や、難治性再発性慢性硬膜下血腫は特殊例以外は大開頭術は行われていません。通常は穿頭やtwist-drillによる閉鎖式血腫ドレナージあるいは穿頭(1~2ヶ所)に加えて血腫排液・血腫腔内洗浄術が主流です。手術後に早期に症状の改善は行われますが、高齢者に至っては長期化する場合が有ります。
薬物療法もあり、小血腫例や無症候例等で血腫内容液に対して浸透圧利尿剤を要います。実際には連続点滴投与を行い治療していきます。
術後の再発率は1割程見られます。明確な症例は確認されていませんが、経過を医者と見ながら再発の可能性がある場合は再手術をします。
早期に発見できれば手術で治すことが出来るので、症例が見られた場合はクリニックに診てもらいましょう。