脳脊髄液減少症は多くの場合、脳脊髄液の漏出によるもので、その漏出の原因は、交通事故やスポーツ、障害、転倒などの外傷によるものが多いです。症状は個人差があり、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感、記憶力低下、集中力低下、視覚障害、味覚・臭覚障害、食欲低下など、多岐にわたり、また患者は日常生活を送ることに困難さを感じているケースが多くあります。
しかし、この病気は、すべての医師に認知されておらず、正しい診断をされずに、適切な治療を受けられていない患者もいます。ゆえに、治療法についても導入がされている医療機関とそうでない医療機関があるのが現実です。
脳脊髄液減少症は、その名の通り、脳脊髄液が減少してしまうことで起きているものなので、漏出を止めることから始めます。まずは初期対応として、10日程の絶対安静を行ないます。トイレや食事以外は横になることで、8割以上の漏れが自然に止まります。この初期対応が重要だと言います。時間が経ってからこの対応をしても、漏れが止まる確率は少なくなります。
そして、この対応で改善されない場合は、ブラインドパッチ(硬膜外自家血注入療法)という治療法が用いられます。これは、脊髄硬膜外腔に自分の血液を注入するものです。1回のブラインドパッチで6、7割の漏れが止まります。これを何回か試みて、脳脊髄液が増えていく経過を見ていきます。漏れが止まっても、増加が見られない場合は人工髄液を腰椎穿刺で髄液腔に直接注入する方法がとられています。 
しかし、このブラインドパッチという治療法は現在、保険適用ではなく、自由診療になっています。ただし、平成24年5月に脳脊髄減少症の中でも、漏出症に対するブラインドパッチについては先進医療とすることが承認されました。そして先進医療の適用を受けた病院では、ブラインドパッチ療法以外の入院治療費等が保険診療で受けられることになっています。しかし、平成25年9月の時点でブラインドパッチが先進医療として承認されている医療機関は全国で32しかなく、患者は辛い症状の中、正しい診断を求め、そして適切な治療を行ってくれる病院を探し、遠方の病院まで訪ねて通われている実情があるようです。
この病気の原因は前述の通り、外傷が多いのですが、とても軽度に思われる外傷、例えば尻もちであったり、スポーツによる転倒など、頻度の高いけがによるものがほとんどです。初期対応の絶対安静で8割の漏出を防げるものであるため、そういった軽微に思えるけがに対しても、安易に受け流すのではなく、念入りに状態を把握、そして背部、頸部、頭部の外傷時にはできるだけ大事をとって安静にすることが、症状の悪化を防ぐ、そして治療を軽くするために重要なポイントであることがわかります。
そして、現在この症状で日々の暮らしに困難さを感じている患者のためにも、医師のこの疾患に対する共通認識がなされること、先進医療の認可がなされいている病院が増えること、そしてさらには保険診療が認められることが望まれます。