脳血管性認知症とは、脳の血管に異常がおきることによって細胞に支障をきたし、認知症としての症状がでてくるというものです。アルツハイマーと同じ老年性認知症(65歳以上の高齢者にあらわれる認知症)の一つです。
例えば脳梗塞・脳出血がおきるとその血栓や出血箇所のまわりの細胞がダメージをうけてしまうので、それが原因となって症状がおきてきます。記憶力の低下、性格の変化(怒りやすくなったり、塞ぎこみがちになる)といったものもありますが、どちらかというと身体機能の低下がみられる場合が多いです。ろれつがまわらない、転びやすくなった、手足の麻痺、歩行障害、排尿障害(失禁する、もしくは頻尿になる)などといったものがその代表です。とくに手足のしびれを訴える場合が多いです。症状はこの梗塞や出血を繰り返すことによって確実に進行していきます。おきた場所が司る機能を失っていくことになりますから、正常な部分とそうでない部分が混在する、俗に言う「まだらぼけ」という症状を起こします。例えば、記憶力は著しく低下しているにもかかわらず計算はしっかりとできるといった状態になることがあります。

認知症といえばアルツハイマーが有名ですが、この脳血管性認知症もあらわれる症状としては大差ありません。しかしながらアルツハイマーとの違いとしては、段階的に悪くなる傾向が強いこと(アルツハイマーは徐々に進行します)、またある日突然症状があらわれる場合があることがあげられます。ただし脳血管狭窄のように血管が徐々に狭くなっていった場合にはその症状も徐々にあらわれるという場合があります。またアルツハイマーが女性にあらわれることが多いのに対し、脳血管性認知症は男性、しかも60歳以降に多いとされています。

では治療はどのように行われるのかといえば、現在のところ確固たる治療法はないというのが現状です。まずは検査をしっかりと行ってアルツハイマー型かどうかの判断が必要です。これは同じ老人性認知症といえどもその後にとるべきケアが全く違ってくるためです。
効果が期待される薬としては血流改善薬や血管拡張薬、代謝賦活薬といったものがあり、これらを徐々に使用しながら梗塞が増加していないか様子をさぐるというのが一般的です。しかしながら脳血管性認知症は糖尿病や高血圧といった生活習慣病がそもそもの発端となっている場合も少なくないため、これらに対する治療をメインとしながら進行するリスクを減らすといった方法が併用して行われます。また鬱傾向が強い場合は抗うつ剤などを使用することもあります。梗塞はちいさなものが一つあっても大した影響をもたらさない場合が多いですが、それが積み重なることによって、明らかな症状となってでてきます。このことから現在いわれている生活習慣病の予防につとめること、つまり食生活の改善や運動を取り入れた生活をすることが一番の予防策として有効になってきます。