脳の病気として知られるもっともポピュラーにしてもっとも恐ろしい病気に「脳腫瘍(のうしゅよう)」がありますが、この脳腫瘍の中でも比較的ポピュラーな病気が「髄膜腫(ずいまくしゅ)」という病気になります。
髄膜腫の特徴は、脳腫瘍の中でも良性腫瘍であるケースが比較的多く、急激に悪化したり肥大化したりするリスクは低いと考えられています。近年では、検査の精度が高くなってきていることから、この病気が偶然見つかるケースも多く、しかも、発症からかなりの時間が経過していたというケースもそれほど珍しくはありません。つまり、悪性腫瘍とちがって、緊急を要する症状ではない場合が多いと言えます。中には、発症した時点でそれ以上大きくならないというケースさえあるそうです。ですから、場所が場所なので、もちろん油断は禁物であるとは言えますが、過度に心配し過ぎる必要はない場合が多い病気でもあります。
ただ、髄膜腫は、腫瘍がゆっくりと時間をかけて大きくなることもあり、そうなってくると、神経を圧迫することで、自覚症状を覚えることもあります。髄膜腫の自覚症状ではどのようなものがあるかというと、たとえば頭痛、吐き気、けいれん発作などが一般的であるとされます。ただし、発症した部位によってその症状も大きく変わってくるのが特徴です。
また、発症した部位によっては物忘れがひどくなる、あるいは認知症のような症状を呈することもあり得ます。さらに、歩行障害、手足の感覚麻痺、視聴覚障害、顔面神経痛といった、神経系疾患の典型的な症状のあらゆる症状を発症する可能性があります。
この病気は、悪性化しづらい病気であるという特徴から、CTなどの検査で比較的早期発見が可能な病気ですから、定期的な検査を繰り返すことで、早期の発見によって事なきを得る場合も多く報告されています。また、早期発見でなくても、それほど活発に進行する腫瘍ではないため、発見次第加療することで、完治できる可能性が高い病気であるとも言えます。
自覚症状があったために検査をしてこの病気が見つかったという場合には例外なく治療を行いますが、無症状のまま定期健診などで偶然見つかった場合には、経過観察しながら治療の方向性を決める場合もあり、必ずしも手術に踏み切るという病気ではありません。ですから、無症状のまま見つかった場合は、医師の裁量と患者さん本人が相談しながら治療の方法を模索していくという形になります。とはいえ、無症状であっても発見の時点ですでに腫瘍が大きくなってしまっている場合には、やはり手術を要すると判断されることが多いと言えます。したがって、手術の有無は、やはり医師の診断を尊重したほうが無難であるとも考えられます。逆に、小さい腫瘍が見つかり、経過観察の結果ほとんど進行していないことがわかれば、無理に手術をする必要がないと判断されることも少なくありませんので、とにかく結論をあせらないことが重要です。