加藤庸子、脳神経外科医。藤田保健衛生大学病院にて救急センター長を務める加藤医師は、くも膜下出血を未然に防ぐ手術「クリッピング術」のスペシャリストとして有名です。

加藤医師は愛知医科大学医学部卒業。その後は名古屋保健衛生大学同神経外科の医局に研修医として入局。中華人民共和国蘇州医学院付属第一病院脳神経外科に留学した後に日本に帰国。トヨタ病院同神経外科局長、藤田学園保健衛生大学同神経外科研究助手を務めた後、再び海外に目を向けオーストリア、グラーツ大学に留学しました。多くの経験を積み、再び日本へ帰国した藤田医師は藤田学園保健衛生大学医学部 同神経外科学の講師、助教授、教授に就任し同時に同大学病院の救命救急センターのセンター長も兼任しています。

加藤医師は脳の血管が破裂してしまい、その出血が脳を圧迫してしまうという膜下出血を発症する前に防ぐ術式クリッピング術で、世界が認める権威です。加藤医師がもっとも得意とするこのクリッピング術はまだ破裂していない脳動脈瘤というこぶを開頭クリッピング術でコブが破裂する前に確実に処理するのです。このこぶを処置しなければこのコブがやがて破裂し、なんと30%以上が死に至ってしまいます。これを脳ドッグや頭部のCT検査等で見つかった脳動脈瘤をクリップと呼ばれる特殊なチタンでできたクリップでこのこぶの根元を挟み、そのコブに血液が流れる事をとめると破裂は回避されるというわけです。

この手術に関して加藤庸子医師はスピードをあまり重視していません。大事なのは場所と状況を瞬時に見極め、早く処置しなければならない場所と、とても重要な箇所を瞬時に見極め、丁寧に施すなどの判断が一番重要だと考えています。

2006年、同神経外科で最初の女性教授に就任しました。また2012年9月には日本脳神経外科学会初の女性として理事に選出されました。日本だけには留まらず、 アメリカ、セントルイス大学医学部にて彼女本人が自ら行った手術を英語で解説して若手の育成、技術の伝授も行っています。また女性脳外科医で世界一と言われる手術数1300例以上という偉業を達成しており、その技を習いたいと日本だけではなく世界中から医師が彼女のもとを訪れています。さらに彼女に講演の要請も世界中から依頼され続けています。

加藤医師は、自分の経験を踏まえて、女性なら誰もが経験する結婚や出産後も女性医師であっても仕事を続けられる環境が必要だということを痛感し、38歳の時に日本脳神経外科女医会を発足しました。そして多くの同じ女性医師たちのパイオニア的存在でもある加藤医師。結婚や出産を経験する女性であっても有能な医師。女性医師ならではの悩みなども多い中で、女性医師たちがしっかり、そしてストレスなく働ける環境整備をしてゆきたいと加藤医師。同時に、海外の途上国の若手脳外科医の教育支援を行っていきたいと語る加藤医師。現在も今なお週3回以上の手術をこなしている加藤医師の元には多くの患者様が彼女を’頼って訪れています。