精神遅滞と呼ばれる知的障害は、一般に、75 70未満のIQ(知能指数)を持つ患者を示し、患者の平均以下の知能や精神的能力と日々の生活のために必要なスキルの欠如によって特徴づけられます。 知的障害を持つ人々は、新たなスキルを習得スピードが極めて遅いことが特徴です。
知的障害患者(精神遅延と同意とする)は、次の2つの能力に限界があるとされています。
1)IQ: 学ぶこと、意思決定を行うこと、問題点を解決する能力。
2)適応的行動: 効果的にコミュニケーションすることにより他の人と対話し、自分自身を表現することができることなど、日々の生活に必要な能力 。
知的障害患者は、人口の約1%存在することが分かっており、さらにそのうちの85%が軽度の精神遅滞であるとされています。 ここで言う「軽度の知的障害」、とは新しい情報やスキルを学ぶことが平均よりも少し遅い程度の患者を示します。そして、この「軽度の知的障害」患者は社会、家族、学校などによる適切なサポートにより、ほとんどが将来的に独立して生活することができるようになります。 小児の知的障害にはさまざまな兆候があります。 兆候は乳児期に発現したり、就学年齢に達するまで、顕著な兆候が発現しない場合もあります。前者の場合、障害が重度の場合が顕著です。知的障害の最も一般的な臨床的徴候は以下と考えられています。
1)寝返り、座ること、匍匐、歩行開始の顕著な遅れ。
2)発語の顕著な青遅れ。
3)着衣困難、トイレ教育、食事教育の遅れ。
4)低い記憶力。
5)合理的、論理的思考の困難。
6)結論に繋がらない言動。
知的障害の最も一般的な原因は次のとおりです。
1)代謝異常、ダウン症を含む遺伝的条件。
2)飲酒、薬物使用、栄養失調、特定の感染症を含む、胎児の脳の発達を妨害する可能性のある妊娠中の母体の問題。
3)早産、感染性髄膜炎 、 百日咳 、麻疹による障害。
4) 重度の頭部(脳)外傷 、溺水、極端な栄養失調、鉛、放射能などの有害物質への暴露。
5)重度のネグレクトや虐待。
特定の知的障害については十分に予防可能です。妊婦が妊娠期間にアルコール摂取を控え、薬物使用を行わない等が容易にあげられる予防法の一つです。また、本邦でも妊娠中の遺伝子検査によりダウン症、代謝異常については予測を行うことができます。勿論、遺伝子検査で知的障害の症状を治療することはできませんが、遺伝性の知的障害においては最も有効な検査法といえるでしょう。出生後の検査方法としては遺伝子検査、血液検査、尿検査、脳内の構造的な問題を探すための画像検査や、脳波の検査が一般的です。 現段階で知的障害の根治療法は存在しないといえます。将来的には遺伝子治療を中心とした治療法が確立されていくことが予測されますし、外科的な治療法の発展も期待されます。しかし、現状においては家庭、学校、社会の三つの組織が良いコミュニケーションの元、患者を支援することが最も重要でしょう。米国、ボストンでは健常児、精神遅滞児が共に学ぶ小学校に市より公的助成金が支払われ、助成を受けているそれらの学校では学習状況、学習成績もよいことが広く知られています。本邦においても、このような公的支援を構築していくことが知的障害者の社会進出を促すことになるでしょう。